俺が確か小学校三、四年くらいのことだったと思う。
とある春の日の週末に、オヤジと一緒に釣りに行ったことがあった。
どこにでもありそうな東京湾の堤防でプラプラと釣糸を垂らしてぼんやりとしていただけなのだが。
その日の収穫は5センチくらいのハゼが4匹だった。
当時ゴエ家では、オヤジが釣ってきたハゼは最高のご馳走であった(決して貧乏ではなかったが)。
小さなハゼはいい具合に身が引き締まっており、唐揚げにしたものをレモンをかけてたべると、口の中に旨味が広がって、本当に幸せに感じたものである。
しかし自分で釣り上げたハゼを前に、俺はとんでもないことをいいだすのである。
曰く、「ハゼを飼おう」と。
細かいことは覚えていないが、あとは泣き落としでなんとかしたのだろう。
オヤジに近所のホームストアーで金魚の飼育セットを買わせることに成功した。
かくしてゴエ家にハゼがやってきたのである。